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イノベーション創出のエコシステム 第3回

4/22/2014

柏野 尊徳( 一般社団法人デザイン思考研究所 代表理事所長)による、「デザイン思考を活用した事業創造 〜シリコンバレーの事例から〜」の講演。

概要:アメリカを例にあげれば、デザイン思考を学んだスタンフォード大学d.school出身者が事業創造を行い、Pulse/Embrace/d.lightといった製品・サービスが成果を出しています。日本でもデザイン思考の活用が望まれており、いくつかの企業ではデザイン思考の活用を前提としたプロジェクトが立ち上がっています。イノベーション活動を組織へ内在化させるためには、手法自体の認知度向上や資源投下の正統性確保など、いくつかの課題が存在します。今回はデザイン思考の概要と事例を紹介しながら、日本でどのようにデザイン思考を活用できるのかについて、皆様と議論するきっかけを提供できればと考えています。
なぜ企業でイノベーションが起こりにくいか?それは、そのように組織が構成されているからだと。典型的な日本の組織では、オペーレション視点、オペレーションがうまくできるように組織が構成されている。失敗をさける、マニュアルどおりをよしとし、手法としてシックスシグマ導入。それに対して、イノベーションは不確実性が極めて高い、失敗から学ぶ文化、修正が前提。基礎となっている組織の構成が、イノベーションを起こしにくくしているという。例として、3Mはシックスシグマを導入、研究者がモチベーションが下がり、効果は得られなかった。日本でも、ヤフーでは、デザイン思考を入れてうまくいっている。その他、機器メーカーでも導入し、3ヶ月間にビジネスアイデアが15個も生まれ、現在も進展中である。
一方、うまくいっていない企業はなぜそうなのか?それは、組織能力、つまり、経営資源(お金、人、物)→ プロセス(どのような基準で意思決定をするのか、どの選択肢に資源を投下すべきか、どの程度(デザイン思考の場合、小分けにしてすすめる)?)→価値基準(文化)という流れができていないのではないか。また、検討する際の3つのレンズー有用性、実現可能性、持続可能性に関しても考慮が必要。新規アイデアは、まず有用性から確認。さらに、イノベーションをつぶしてしまう質問をしていないか?学習する質問ができているか?新入社員に「企業のミッションは何か?」と聞かれた時、「年商10億」とか答えていないか?ミッション=使命、何のために何をするのか。であり、イノベーションを方向付ける大切な概念である。

「イノベーション創出ワークショップ:早稲田大学での試み」          澤谷 由里子(早稲田大学 教授)

概要:早稲田大学では、社会とともに価値を共創しデザインする場である《社会デザイン工房》構想の具体化を進めている。最初の試みとして、早稲田大学の学生・教員と複数企業によるイノベーション創出ワークショップを実施した。ワークショップでは、早稲田大学の参加者は、顧客・研究者・起業家としての視点から、企業からの参加者はビジネス・業務の専門家としての視点から、価値共創し、快適・安心をキーワードに今まで体験したことのない生活空間をデザインした。未来の快適空間のコンセプトやプロダクト・プロトタイプの作成・検証を3ヶ月という短期間に行った。各プロジェクトチームのインプット(チーム、課題)、プロセス(アイデア創出・プロトタイピングでの試行錯誤)、アウトプット(最終発表会での評価)を分析し、その途中経過を報告する。